朝起きると、ツンデレになっていた

朝起きると、ツンデレになっていた。

「なによ、コレ。金髪にツインテールじゃない。まあ、悪い気はしないけど…って、なによ、なんか文句あるの」

鏡を見て思わず呟いてしまった。口調もツンデレそのものだ。

とりあえず、俺は頭の両端からぶら下がってるツインテールの片方を「ツン」、もう片方を「デレ」と名付け、病院に行くことにした。

「次のお客様、どうぞ」

「あの、朝起きたらツンデレになってしまったのですが…。って、違うわよ、べつにツンデレなんかじゃないんだから」

ツンデレなせいで自分の症状をハッキリと申告できない。我ながら難儀な体質になったものだ。

「そうですか、では番号札をお渡ししますので、そちらの席へどうぞ」

この手の症状をもった患者には受付のお姉さんも慣れているらしく、すぐに察してくれた。心遣いが身に沁みる。

しばらくすると診察室へと案内され、担当の先生とご対面だ。

「なによ、あんたもツンデレなわけ?」

担当の先生もツンデレだった。

「なによ、悪い?あたしだって好きでツンデレやってるわけじゃないんだから。本当だからね。」

「べ、べつに悪いってわけじゃ…ただ、その、奇遇だなって…。って、あたしは何を言ってるのよ」

そんなやり取りを2、3回繰り返した後、本題に入った。

「つまり、あなたのツンデレをツンデレたらしめている要素、つまりあなたの頭部から生え出ているツインテール…
これを仮に、右のツインテールをα、左のツインテールをβとしたとして、まあ単体として扱うのにツインというのもおかしな話ですが、これらはあなたの意思とは関係なく自律して動く一種のオートボットのようなもので、それぞれが固有のパーソナリティを持っています。彼女たちはあなたの感情の揺れ幅を観測、分析し、え〜〜〜つまり、べ、べつにあなたのために説明してあげてるんじゃないんだからね、と、そういった外的要因を考慮した上で、」

「なるほど、では、これらのツンとデレ…ああいえ、αとβでしたね、それらを例えば鉈で切り落とした場合、殺人罪に繋がる、と。そういうわけですね。ふん、言われなくてもわかってたわよ」

「はい。ですので、今後ツンデレとしての活動を控えたい場合はツンとデレ、αとβ…彼女らに精神安定剤を服用させるか、もしくは、これはコストがかかりすぎるのであまりお勧めしませんが、ワニを飼育するのも1つの手かと…。ま、まあ、あんたにはそんなことできっこないわよね」

「ワニはツンデレをビビらせる効果がありますからね…。なるほど、参考になりました。じゃあ帰りますね。あんたなんてべつに好きじゃないんだから。」

「ええ、お大事に。あんたなんてべつに好きじゃないんだから。」

帰り際、ペットショップを訪れた俺はワニに噛まれて瀕死の重傷を負った。

それ以来ツンもデレもなりを潜め、二度とツンデレが発症することはなかったが、彼女らに会えないのは少し寂しくも思う。

「べ、べつに、寂しいとか、そんなんじゃないんだから」

そんな呟きを口の中で反芻する。

「…はは、ばかだな、俺は。こんなこと言ったって、ツンデレは帰ってこない。
帰ってきたとしても、それはツンでもデレでもαでもβでもない、別の存在なんだ。俺の頭部の両端はただの髪に戻ったんだ」

その夜、俺は屋根裏から侵入してきたいつだかのワニに噛まれて死んだ。

ペットショップで育てられて、その本性を眠らせていたとしても、本来ワニは野生で生まれ、野生に生きる動物だ。
俺がその本性を、俺の血肉を食わせてしまったことにより目覚めさせてしまったのだ。

ワニは悪くない。悪いのはこの国の歪んだ司法制度だ。

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